はじめに――なぜ今、著名投資家の資金移動を検証するのか
コロナ禍が明けた2021年以降、金利・インフレ・AIブーム・地政学リスクと市場環境が急変しました。こうした激動の4年間で、著名投資家たちはどのセクターに資金を移動させ、何を売り抜いたのでしょうか。
今回はSEC(米国証券取引委員会)への13F申告書・年次報告書をもとに、ウォーレン・バフェット、レイ・ダリオ、ビル・アックマン、カール・アイカーンの4名について現金を含むポートフォリオの2021年→2025年の変化を数値で比較します。
著名投資家4名のポートフォリオ変化(2021年→2025年)
1. 現金・株式・コモディティの比率変化
ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイ)
最大の変化は現金・米国債が29%から51%へ急増したことです。一方でアップルを32%から11%まで段階的に売却しました。2021年時点ではアップル1銘柄でポートフォリオの約3分の1を占めていましたが、2025年現在は現金が過半を占める構成に転換しています。
| 銘柄・資産 | 2021年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金・米国債 | 29% | 51% | +22pt |
| アップル | 32% | 11% | ▼−21pt |
| バンク・オブ・アメリカ | 9% | 5% | −4pt |
| アメリカン・エキスプレス | 5% | 5% | 変化なし |
| コカ・コーラ | 5% | 4% | −1pt |
| クラフト・ハインツ | 3% | — | 売却 |
| シェブロン | — | 3% | 新規 |
| オクシデンタル | — | 2% | 新規 |
| その他株式 | 17% | 19% | +2pt |
出典:Berkshire Hathaway Annual Report 2021 / SEC EDGAR Form 13F(2024 Q4)

▲ 増加 Top3
| 順位 | 銘柄・資産 | 2021年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 現金・米国債 | 29% | 51% | +22pt |
| 2位 | シェブロン | — | 3% | +3pt(新規) |
| 3位 | オクシデンタル | — | 2% | +2pt(新規) |
▼ 減少 Top3
| 順位 | 銘柄・資産 | 2021年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | アップル | 32% | 11% | ▼−21pt |
| 2位 | バンク・オブ・アメリカ | 9% | 5% | ▼−4pt |
| 3位 | クラフト・ハインツ | 3% | — | ▼−3pt(売却) |
レイ・ダリオ(ブリッジウォーター・オール・ウェザー)
オール・ウェザーの基本配分(株式30%・長期国債40%・中期国債15%・金7.5%・コモディティ7.5%)は変わりません。ただし株式内訳に変化があり、米国株ETFを22%から15%に縮小し、新興国株ETFを6%から10%に増加。インド株ETF(INDA)を3%新規追加しています。
| 銘柄・資産 | 2021年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 米国株ETF(SPY等) | 22% | 15% | ▼−7pt |
| 新興国株ETF(EEM/VWO) | 6% | 10% | +4pt |
| インド株ETF(INDA) | — | 3% | 新規 |
| 先進国株ETF | 2% | 2% | 変化なし |
| 長期国債(TLT等) | 40% | 40% | 変化なし |
| 中期国債(IEF等) | 15% | 15% | 変化なし |
| 金(GLD) | 7.5% | 7.5% | 変化なし |
| コモディティETF(DJP等) | 7.5% | 7.5% | 変化なし |
出典:Bridgewater Associates 公式解説 / SEC EDGAR Form 13F(2024 Q4)

▲ 増加 Top3
| 順位 | 銘柄・資産 | 2021年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 新興国株ETF(EEM/VWO) | 6% | 10% | +4pt |
| 2位 | インド株ETF(INDA) | — | 3% | +3pt(新規) |
| 3位 | 先進国株ETF | 2% | 2% | 変化なし |
▼ 減少 Top3
| 順位 | 銘柄・資産 | 2021年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 米国株ETF(SPY等) | 22% | 15% | ▼−7pt |
| 2位 | 長期国債(TLT等) | 40% | 40% | 変化なし |
| 3位 | 中期国債(IEF等) | 15% | 15% | 変化なし |
ビル・アックマン(パーシング・スクエア)
4名の中で最もポートフォリオの変化が大きいのがアックマンです。2021年に保有していたローズ(Lowe’s)・ドミノズ・カナダ太平洋鉄道・エイジレントをすべて売却し、代わりにブルックフィールド(不動産・代替資産)・アルファベット(Google)・チポトレ・ナイキを新規取得。一般消費財・工業系からテクノロジー・代替資産へのシフトが明確です。
| 銘柄 | 2021年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金・その他 | 18% | 10% | −8pt |
| ヒルトン | 16% | 22% | +6pt |
| ローズ(Lowe’s) | 18% | — | 売却 |
| レストラン・ブランズ | 13% | — | 売却 |
| ドミノズ・ピザ | 11% | — | 売却 |
| ユニバーサル・ミュージック | 8% | — | 売却 |
| カナダ太平洋鉄道 | 8% | — | 売却 |
| エイジレント | 8% | — | 売却 |
| ブルックフィールド | — | 20% | 新規+20pt |
| アルファベット(Google) | — | 18% | 新規+18pt |
| チポトレ | — | 15% | 新規 |
| ナイキ | — | 10% | 新規 |
| ハワード・ヒューズ | — | 5% | 新規 |
出典:SEC EDGAR Form 13F(Pershing Square 2021 Q4 / 2024 Q4)

▲ 増加 Top3
| 順位 | 銘柄・資産 | 2021年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | ブルックフィールド | — | 20% | +20pt(新規) |
| 2位 | アルファベット(Google) | — | 18% | +18pt(新規) |
| 3位 | チポトレ | — | 15% | +15pt(新規) |
▼ 減少 Top3
| 順位 | 銘柄・資産 | 2021年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | ローズ(Lowe’s) | 18% | — | ▼−18pt(売却) |
| 2位 | レストラン・ブランズ | 13% | — | ▼−13pt(売却) |
| 3位 | ドミノズ・ピザ | 11% | — | ▼−11pt(売却) |
カール・アイカーン(アイカーン・エンタープライズ)
エネルギー(CVR)が20%から35%へ拡大し、ポートフォリオの最大セクターになりました。一方で金融ポジションは全て解消。2023年にヒンデンバーグ・リサーチの空売りレポートを受け、アイカーン・エンタープライズ株が約70%下落。その影響で現金比率が15%から25%に増加しています。
| セクター | 2021年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金・その他 | 15% | 25% | +10pt |
| エネルギー(CVR含む) | 20% | 35% | +15pt |
| 製造業・化学 / 化学 | 20% | 8% | ▼−12pt |
| 不動産 | 20% | 12% | −8pt |
| 金融 | 15% | — | ▼−15pt(全売却) |
| 製薬・ヘルスケア | — | 15% | 新規 |
| その他 | 10% | 5% | −5pt |
出典:Icahn Enterprises Annual Report(10-K) / SEC EDGAR Form 13F(2024 Q4)

▲ 増加 Top3
| 順位 | セクター | 2021年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | エネルギー(CVR) | 20% | 35% | +15pt |
| 2位 | 製薬・ヘルスケア | — | 15% | +15pt(新規) |
| 3位 | 現金・その他 | 15% | 25% | +10pt |
▼ 減少 Top3
| 順位 | セクター | 2021年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 金融 | 15% | — | ▼−15pt(全売却) |
| 2位 | 製造業・化学 | 20% | 8% | ▼−12pt |
| 3位 | 不動産 | 20% | 12% | ▼−8pt |
まとめ――著名投資家の資金移動から見える投資戦略
- 4名全員に共通:AIブームにもかかわらず、AI関連個別株への直接的な大規模集中投資は見られない。
- バフェットは現金を歴史的水準まで積み上げ。 2021年比で+22ptの51%に達し、適切な投資先が現れるまで待つ姿勢を明確にしている。
- ダリオは新興国・インドへの比率を引き上げ。 米国一極集中からの分散シフトが13Fに表れている。
- アックマンは2021年保有銘柄を全面的に入れ替え。 一般消費財・工業系から、テクノロジー・代替資産・外食へ軸足を移した。
- アイカーンはエネルギーへの集中が加速する一方、金融を全売却。 2023年の空売りレポートによる資産縮小は、集中型アクティビスト戦略のリスクを示す実例となっている。
- 現金比率の増加(バフェット・アイカーン)と銘柄入れ替え(アックマン)が2021年以降の共通トレンド。 高金利・不透明な経済環境の中で、投資機会の選別が一段と厳しくなっている。
・コロナ禍後からの上昇相場の中で、有名投資家達はどのようにポジションを変化させたかをみるために今回検証を行いました。
・バフェットの納得する投資先が出現するまで現金を積み上げる姿勢は、投資先を厳しい目で吟味することの重要性を示すとともに、多くの企業のバリュエーションが高すぎる事を示しているのかもしれません.
・レイダリオのインドを含む新興国株のポジションを高める戦略は、次のブームとして新興国株が来ることに賭けているのだと考えられます。今回の株価の下落がひと段落したら、私も新興国株のポジションを高めていきたいと考えています。
・バフェットやアイ・カーンが金融株の割合を下げ、エネルギー株の割合を上げている点が共通していました。いままで私はこの点に注目していませんでしたが、ホルムズ海峡封鎖の問題を通して、エネルギー供給の重要性を再認識しました。有名投資家達は、エネルギー株が重要であるにも関わらず軽視されていることを投資チャンスと考え、先回りして投資をしていたのかもしれません・
(Image by Thanasis Papazacharias from Pixabay)
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