ホルムズ海峡封鎖が農作物の危機を招く?農作物ETF(1687・DBA・WEAT)を徹底比較【2026年最新】

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はじめに――ホルムズ海峡と農作物の意外な関係

2026年のイラン・イスラエル紛争激化により、ホルムズ海峡の封鎖リスクが急浮上しています。ホルムズ海峡は石油・LNGの輸送路として広く知られていますが、実は世界の肥料貿易においても極めて重要なルートです。肥料が滞れば、農作物の生産コストが上昇し、農産物価格に直接波及します。

今回はホルムズ海峡を通じて輸出される肥料の世界シェアを確認したうえで、影響を受ける作物と農作物ETFへの投資妙味を検証します。


ホルムズ海峡から輸出される肥料と作物

1. 肥料の種類と世界的シェア

肥料の三大栄養素は**窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)**です。このうちホルムズ海峡の封鎖リスクに直結するのは窒素肥料とリン酸肥料です。

窒素肥料(尿素・アンモニア)

【中東主要輸出国】

主要輸出国代表企業年間輸出量
(尿素換算)
世界シェアホルムズ経由
カタールQAFCO(カタール肥料会社)約320万トン約5〜7%全量
サウジアラビアSABIC・Ma’aden約400万トン約6〜8%約70〜80%※
UAEFERTIL(ルワイス)約100万トン約1〜2%全量
中東計約820万トン約12〜15%

※ サウジアラビアの窒素肥料生産設備の約70〜80%はアラビア湾岸のジュバイル工業地帯(SABIC系)に集中しており、輸出はキング・ファハド工業港(ジュバイル)を通じてホルムズ海峡経由となります。残る約20〜30%はヤンブー・ジェッダ(紅海側)経由のため、封鎖の影響を受けません。

【中東以外の主要輸出国】

主要輸出国代表企業年間輸出量
(尿素換算)
世界シェア特記事項
中国各社約1,500〜2,000万トン約25〜30%国内需要優先で輸出制限が頻繁に発動
ロシアEuroChem・Acron約1,000万トン約15〜18%制裁リスクあり。欧州向け供給が不安定
エジプトMOPCO・EFIC約350万トン約5〜6%地中海経由。欧州・南アジア向け
マレーシアPETRONAS約200万トン約3〜4%アジア・オセアニア向けが中心
インドネシアPupuk Indonesia約200万トン約3〜4%国内農業向け優先のため輸出は変動大
トリニダード・トバゴMethanex他約200万トン約3%北米・南米向け。安定供給源

出典:IFA(国際肥料工業協会)統計 / 各社公式IR資料 / SABIC Annual Report / Ma’aden Annual Report

リン酸肥料(DAP・MAP)

主要輸出国代表企業世界シェアホルムズ経由
サウジアラビアMa’aden Phosphate約10〜12%ジュバイル港(湾岸側)
モロッコOCP約35〜40%なし(大西洋側)
中国各社約20〜25%なし

出典:IFA統計 / Ma’aden Annual Report

カリウム肥料(カリ)はカナダ・ロシア・ベラルーシが主産地のため、ホルムズ封鎖の影響はほぼ受けません。


2. 影響を受ける作物と施肥時期

作物必要な肥料主な施肥時期ホルムズ封鎖の影響
小麦窒素・リン酸秋播き(9〜11月)・追肥(2〜3月)
トウモロコシ窒素(多量)春播き前(3〜5月)
窒素(多量)田植え前後(4〜7月、アジア)
大豆リン酸・カリ
(窒素固定)
播種前(5〜6月)
砂糖きび窒素・リン酸年間通じて
コーヒー窒素・カリ年間通じて

出典:FAO(国連食糧農業機関)肥料需要データ

2026年3〜5月はトウモロコシ・大豆の春播き施肥期と重なるため、肥料不足が実需に直撃する可能性があります。


日本から投資できる農作物ETF比較

ETF一覧比較

【東証上場】

ティッカー正式名称連動指数特徴信託報酬(年率)
1687WisdomTree 農産物上場投資信託Bloomberg Agriculture Subindex農産物8品目・100%農産物0.49%
1688WisdomTree 穀物上場投資信託Bloomberg Grains Subindex穀物5品目(大豆・トウモロコシ・小麦等)・100%穀物0.49%
1695WisdomTree 小麦上場投資信託Bloomberg Wheat Subindex小麦先物のみ0.49%
1696WisdomTree とうもろこし上場投資信託Bloomberg Corn Subindexトウモロコシ先物のみ0.49%
1697WisdomTree 大豆上場投資信託Bloomberg Soybean Subindex大豆先物のみ0.49%

【米国上場(日本の証券会社で購入可能)】

ティッカー正式名称上場市場特徴信託報酬
(年率)
主要取扱証券会社
DBAInvesco DB Agriculture FundNYSE Arca農産物9品目・100%農産物0.93%SBI・楽天・
マネックス・日興
WEATTeucrium Wheat FundNYSE Arca小麦先物特化1.04%SBI・楽天・
マネックス
CORNTeucrium Corn FundNYSE Arcaトウモロコシ先物特化1.04%SBI・楽天・
マネックス
SOYBTeucrium Soybean FundNYSE Arca大豆先物特化1.04%SBI・楽天
DBCInvesco DB Commodity IndexNYSE Arcaエネルギー・金属・農産物の広範コモディティ0.85%楽天・
マネックス
GSGiShares S&P GSCI Commodity-Indexed TrustNYSE ArcaS&P GSCIに連動・エネルギー比率高め(約60%)0.75%SBI・楽天・
マネックス
DJPiPath Bloomberg Commodity Index Total Return ETNNYSE ArcaBloomberg Commodity Indexに連動・農産物約30%含む0.70%SBI・楽天

出典:WisdomTree 1687公式 / JPX ETF銘柄一覧 / Invesco DBA / Teucrium公式サイト / iShares GSG / iPath DJP(2025年末時点)


1687(WisdomTree 農産物上場投資信託)の構成割合

1687が連動するBloomberg Agriculture Subindexは農産物先物8品目で構成される100%農産物ファンドです。ホルムズ海峡封鎖の影響を直接受けるトウモロコシ・大豆・小麦・砂糖が主要構成品目です。

構成品目比率(概算)
トウモロコシ約22%
大豆約20%
砂糖約15%
小麦(シカゴ)約11%
大豆油約10%
綿花約8%
大豆ミール約8%
コーヒー約6%

出典:WisdomTree Bloomberg Agriculture Subindex ETF公式 / Bloomberg Agriculture Subindex


1688(WisdomTree 穀物上場投資信託)の構成割合

1688が連動するBloomberg Grains Subindexは穀物5品目で構成されます。ホルムズ海峡封鎖で影響を受ける窒素肥料の主要需要先(トウモロコシ・大豆・小麦)が中心で、1687より穀物への集中度が高いのが特徴です。

構成品目比率(概算)
トウモロコシ約33%
大豆約30%
大豆油約14%
小麦(シカゴ)約14%
大豆ミール約9%

出典:WisdomTree Bloomberg Grains Subindex ETF公式


DBA(Invesco DB Agriculture Fund)の構成割合

DBAが連動するDBIQ Diversified Agriculture Indexは9品目の農産物先物で構成されています。1687・1688と同様に100%農産物ファンドですが、畜産(生牛・豚)を23%含む点が特徴です。

セクター主な構成品目比率
穀物(Grains)トウモロコシ(11%)・大豆(11%)・小麦シカゴ(9%)・小麦カンザスシティ(9%)40%
ソフト系(Softs)砂糖(13%)・カカオ(13%)・コーヒー(11%)37%
畜産(Livestock)生牛(12%)・豚/リーン・ホッグ(11%)23%

出典:Invesco DB Agriculture Fund 公式ファクトシート


DBC(Invesco DB Commodity Index Tracking Fund)の構成割合

日本からの購入:楽天証券・マネックス証券で取り扱いあり(米国株式口座で購入可能)

DBCが連動するDBIQ Optimum Yield Diversified Commodity Indexは14品目の先物で構成されます。エネルギーが約55%を占める広範コモディティファンドのため、農産物への純粋なエクスポージャーは約23%にとどまります。

セクター主な構成品目比率(概算)
エネルギーWTI原油・Brent原油・RBOBガソリン・ヒーティングオイル・天然ガス約55%
農産物トウモロコシ・小麦(シカゴ)・大豆・砂糖約23%
産業金属アルミニウム・亜鉛・銅約12%
貴金属金・銀約10%

出典:Invesco DB Commodity Index Tracking Fund 公式ファクトシート(概算値)


GSG(iShares S&P GSCI Commodity-Indexed Trust)の構成割合

日本からの購入:SBI証券・楽天証券・マネックス証券で取り扱いあり(米国株式口座で購入可能)

GSGが連動するS&P GSCIは生産量加重型のため、エネルギーが約60%と最も高い比率を占めます。農産物は約15%・畜産7%を含みますが、農業関連コモディティへの純粋な投資目的には不向きです。

セクター主な構成品目比率(概算)
エネルギーWTI原油・Brent原油・天然ガス・ガソリン等約60%
農産物小麦・トウモロコシ・大豆・砂糖・コーヒー・綿花約15%
産業金属銅・アルミニウム・亜鉛・ニッケル約12%
畜産生牛・豚(リーン・ホッグ)約7%
貴金属金・銀約6%

出典:iShares S&P GSCI Commodity-Indexed Trust 公式ファクトシート(概算値)


DJP(iPath Bloomberg Commodity Index Total Return ETN)の構成割合

日本からの購入:SBI証券・楽天証券で取り扱いあり(米国株式口座で購入可能。ETFではなくETN=上場投資証券のため、発行体(バークレイズ)の信用リスクが発生する点に注意)

DJPが連動するBloomberg Commodity Indexは単一セクターへの過度な偏りを抑制する設計のため、エネルギー・農産物・金属が均等に近い配分になっています。農産物比率は約29%とDBC・GSGより高く、農業関連コモディティとしての代替性があります。

セクター主な構成品目比率(概算)
エネルギーWTI原油・Brent原油・天然ガス等約30%
農産物大豆・トウモロコシ・小麦・砂糖・コーヒー・綿花約29%
貴金属金・銀約19%
産業金属銅・アルミニウム・亜鉛約17%
畜産生牛・豚(リーン・ホッグ)約5%

出典:iPath Bloomberg Commodity Index ETN 公式(概算値)


他のコモディティと比較した農作物ETFの価格変化率(2025/12/31〜2026/3/30)

2025/12/31終値を基準に、2026年3月30日終値までの価格変化率を比較します。

資産種別2025/12/312026/3/30騰落率
金(GLD)ETF$396.31$414.58+4.6%
銀(SLV)ETF$64.42$63.52-1.4%
銅(CPER)ETF$34.96$33.59-3.9%
パラジウム(PALL)ETF$145.38$128.11-11.9%
アルミニウム(ALI=F)※1先物$2,906$3,336+14.8%
WTI原油(USO)※2ETF$69.16$129.83+87.7%
天然ガス(UNG)ETF$12.26$11.68-4.7%
農産物広範(DBA)ETF$25.52$27.12+6.3%
小麦(WEAT)ETF$19.97$23.26+16.5%
トウモロコシ(CORN)ETF$17.73$18.29+3.2%
大豆(SOYB)ETF$21.86$24.17+10.6%

※1 アルミニウムは日本から投資可能な純粋ETFが存在しないため、CMEアルミニウム先物(ALI=F)の価格を参考値として掲載。単位はUSD/トン。
※2 USOはWTI原油先物のロールオーバーコストを含むため、原油スポット価格との乖離が生じる場合があります。
※基準価格は2025/12/31終値。

出典:Yahoo Finance(yfinance)取得データ(2026年3月30日時点) / SEC EDGAR ETFデータ


まとめ――農作物ETFへの投資戦略

  • ホルムズ海峡が封鎖された場合、世界の窒素肥料の約12〜15%・リン酸肥料の約10〜12%が供給途絶するリスクがある。
  • 影響が最も大きい作物はトウモロコシ・小麦・米:いずれも窒素肥料の依存度が高く、2026年春の施肥期と封鎖リスクが重なっている。
  • 大豆は窒素固定能力があるためリスクは相対的に低い。
  • 東証上場の農産物ETFはWisdomTreeシリーズ(1687〜1697)が中心。 1687は農産物8品目・1688は穀物5品目・1695〜1697は単一作物特化型で、すべて100%農産物ファンド。円建てで購入できるため為替手数料が不要。
  • 米国上場ではDBA(農産物9品目)・WEAT・CORN・SOYB(単一作物)が利用可能。 DBC・GSG・DJP(広範コモディティ)はエネルギー・金属も含むため農産物への純粋なエクスポージャーには不向き。
  • WEAT・CORN・SOYBおよび東証の1695〜1697は単一作物特化型のため、特定作物への集中投資が可能。ただし純資産総額が小さく流動性に注意が必要。
  • 肥料価格の上昇は農産物コストに数ヶ月遅れて波及するため、播種前の3〜5月の肥料調達コスト上昇が夏以降の農産物価格に影響する可能性がある。

ホルムズ海峡封鎖により肥料にも影響があること、また現在の時期は小麦・トウモロコシ・米に大きな影響を与える可能性があることを学びました。

今年に入ってからのコモディティ価格の増減に注目すると、原油と比較して小麦やトウモロコシの増加率は小さいことが分かります。そのため短期投資としてはWEAT、CORN、1695や1696が面白いかもしれません。

長期的なインフレリスクヘッジとして、信託報酬の比較的安い1687や1688を少しずつ買う戦略もありかなと考えています。

UnsplashMarkus Spiskeが撮影したイラスト素材)

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